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羊頭を掲げて狗肉を売る

 故事の通りの出来事が、ロシアであったという。

 ロイター電によると、一ヶ月ほど前に、モスクワの中国料理店が羊肉と偽って野良犬の肉を使用した料理を客に出していたことが判明した。夜中に近所の野良犬を捕まえてきては、屠殺していたのだが、その様子を不審に思った人物が当局に通報したことから、この店の悪行が露見したらしい。その肉は衛生的な観点から、とても人が口にできるレベルのものではなかったという。

 なんともお粗末な事件であるが、五十歩百歩の食品偽装問題が噴出している日本人には嗤えまい。

 ただ、この事件、「羊肉」と偽っていたという点がいささか気になる。もし、客にムスリムがいたら、どうなるか。ロシアにはイスラム教徒も少なからず存在するのだ。豚を多用する中華料理店に出入りする者はあまりいないかとも思うが、もしいたとして、知らずと犬の肉を口にしていたとしたら、これは大問題になる。ご存じの通り、イスラムでは犬と豚は不浄の生き物として忌避される。これらが使われる食品は、絶対に食べてはいけない。

 二〇〇〇年にあった、インドネシアでの「味の素騒動」を記憶している人も多いだろう。原料に豚の肉が使われているという風評(実際には、発酵菌の栄養源を作る過程で触媒として豚の酵素が使われていた-[Wikipedia]より)で、不買運動が起こり、ついには現地法人の社長が逮捕されるまでの事態に至った。調味料でさえ、これほどの拒否反応を示されるのだ。まして、実際の肉となれば、どうなることか。場合によっては、これが理由となる報復殺人まで起こりかねないだろう。これは決してオーバーな話ではない。それほどまでに、イスラム教徒にとって、「食のタブー」は厳然たる意味を持つ。

 日本社会においても、グローバル化は確実に進んでいる。様々な文化的・宗教的背景を持つ人間が流入している現状において、食品の偽装というのは、想像外の波紋を広げかねないのだ。しかし、これも正当な表示さえされていれば片付く問題である。

 ほとんどの食品関係の企業はまっとうにやっておられるのだが、一部の不埒な食品関係者には、自らの身を守るためにも、正直な商売をお願いしたいと思う。

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